04-2 松山大学図書館 井上清麻 Seima Inoue
図書館の職員さんといえば、司書の資格を持った方というイメージもありますが、井上さんはその資格は持っていません。図書館業務の中には専門性のいる仕事もあり、事務職員がいきなり図書館に配属されると、初めは戸惑うかもしれません。井上さんもその一人で、慣れない新しい仕事と向き合い悩みながらも毎日頑張って働いています!!
そ・れ・か・ら“松大の七不思議~図書館編~”のウワサも要チェックですよ!?今回は特別にみなさんに大公開しちゃいます!
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profile
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1978年生まれ。大学卒業後、金融業の営業職を経て、2007年、学校法人松山大学の事務職員に。経理課 、教務課を経て、12年 、図書館の情報サービ ス課に配属。本の貸し出し・返却といったカウンターでの業務や、配架などをしている。
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interview
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時には体力勝負、でも繊細な作業も必要!
図書館職員暦2年目、図書館の裏話語る
★繊細さと体力が求められる仕事なんです。
図書館業務には移動した本のデータを書き換える作業があり、繊細な部分も必要になります。そのため、多くの方が机の上での作業やカウンターで本の貸し出しの仕事をしているというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。でも、本の番号が合わなくなるときに何番から何番までの本をごっそりと移動させたり、棚ごと移動させたりしないといけないことがあります。そのようなときに本を一冊一冊移動させるので意外と力仕事もいるんですよね。つまり、細かい作業と力のいる作業の両方が必要になってきます。
★松大図書館の怪談話を教えちゃいます。
えっ?「図書館のヒミツを教えてほしい」…ですか?「松大の七不思議」という昔から有名な噂話がありますね。これは私が図書館に配属されて仕事を引き継いだ方から聞いた噂話なのですが、その「松大の七不思議」のひとつが図書館にもあるみたいで。昔、地下の書庫で人が夏休み中に誤って閉じ込められて死んでしまい、それから霊が出るようになったとか。地下の書庫に近づくことができなくて、用事があっても他の人に代わりに行ってもらっていた人もいたらしいです。私自身は、霊がいるようには感じないですけどね(笑)。普通に考えると見回りや防犯センサーなどもありますし、人が死ぬまで何日も閉じ込められるなんてことは、まずないですしね。
★本が家と同等の価値あり!?
松山大学には稀覯書室(きこうしょしつ)というところがあり、すごく貴重な本や資料が保管されている部屋があります。家が一軒建つほどの値打ちがあったという噂もある有名な本の初版などもありますよ。単に高価というだけでなく、歴史的にみても大変価値のあるものですから、湿度や温度の管理を厳重にして、扱うときには手の脂がつかないように、手袋をはめます。確か、江戸時代のころ使われていたお札もあって、そういうのが好きな地域住民の方に見せてほしいと言われたこともありましたね。
★大学図書館に求められる新たな環境
大学図書館は学生や教職員をメーンにサービスを提供していますが、多くの大学図書館が現在そうしているように、松山大学図書館でも地域貢献を視野に入れていて、市民の方にも解放しているんですよ。年間で約1700人の市民の方にご利用頂いています。
最近では「ラーニング・コモンズ」という新たな学習方法として、勉強するための共有空間や飲食できたり、議論できたりといったスペースがある大学図書館が注目されています。求められる役割が多様化していますが、松山大学図書館にはそのようなスペースがないので、検討をしなけ ればならない段階にきています。大学図書館としてはこうした新たな考え方も取り入れていく必要もあるし、そうしていきたいとも考えています。
最後にはなりますが、学生時代に多くの本にふれることは人生の財産になるかもしれません。図書館を利用したことのない方は、ぜひ一度お越しください。
編集後記
地域市民の方が稀覯書室にある貴重な資料を求めて足を運んで来たことがあるというエピソードを聞き、松山大学図書館は地域資源の一つとして重要な役割を果たしているのだと実感しました。勉強や研究のためだけではなく、貴重な歴史資料の大切な保管場所として大切にしていかなければならないと思いました。
今回取材をしてみて、大学図書館の役割の幅が広がってきていると感じました。大学の事務職の中では、図書館は比較的時間にゆとりある仕事だと思われているとも聞きました。しかし、実際には、大学図書館は学生や教職員、地域住民といった異なる立場から求められることにも上手く対応しなければなりません。さらに、IT化や大学自体に求められる役割の変化などの社会の変化を背景に、大学図書館の将来像について様々な議論もされています。そのため、図書館で働く方の姿勢や大学図書館の在り方 について考え直さなければならない段階にきているのではないかと思いました。
取材の中で、私たちが井上さん自身も知らないようなことを質問した際に、すぐに走っていって、詳しい方に聞いて下さいました。その後、「知らなかったことを知るきっかけになった」と私たちにお礼をおっしゃったことが印象に残っています。井上さんは日々図書館で新しい発見をしながらひたむきに仕事と向き合っているのだと感じました。
最近、自分の興味のある分野の教授の指定図書を読むことが私のちょっとしたブームです。置いてある図書を見るだけで、教授が学生に何を伝えようとしているのか、なんとなく伝わってきます。これは、各大学の先生方の個性が図書にもにじみ出ていて、大学図書館の魅力の一つだと思います。
取材日:2013年9月26日
取材:植田名津美・門多大・田中杏奈
文:植田名津美